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大阪地方裁判所 昭和31年(ワ)2835号 判決 1958年2月05日

大阪府中小企業信用保証協会

協和銀行

事実

被告は額面一五万円、支払期日昭和二八年一二月七日、振出日同年八月三日とする約束手形外一四通の額面合計一五一万円の約束手形を受取人訴外A株式会社宛に振り出し、Aは訴外協和銀行に裏書譲渡し、訴外銀行は各支払期日に手形を呈示したが、拒絶された。原告協会は訴外銀行から一五通の約束手形の裏書譲渡を受け被告に対し手形元金と法定利息の支払を本訴で求めた。被告は、本件各手形はA会社の懇請によりA会社が信用上他に見せるだけのものであつて決して第三者に譲渡しないという条件でAに振出交付したものであり、原告は手形取得に当り前記事情を承知していたのであるから本訴は失当であると答弁した。

理由

証拠によれば被告は、本件各手形を他に譲渡しないことを特約してA会社に交付した事実を認めることができるが、その趣旨は、A会社が本件各手形を銀行で割引を受け期日にはA会社において手形を決済し、被告には迷惑をかけないという約束で融通のためA会社に貸与したもので、右目的以外に手形を第三者に譲渡しない特約であつたと認められる。而して右の如き振出事情は、被告のA会社に対する人的関係に基く抗弁事由たるに過ぎず、右A会社から裏書譲渡を受けた訴外協和銀行が右振出の情を知り振出人たる被告を害することを知つてこれを取得したと認められる証拠はないから、被告の右抗弁を以て右銀行に対抗することはできない。又前認定のとおり本件各手形はA会社に融通の目的を以て振出されたものであるから、右銀行が融通手形であることを知つていたか否かは右銀行が本件各手形上の権利を取得するについて何等の消長を来すものでもない。即ち右銀行は本件手形上の権利を正当に取得したものといわねばならない。而して、原告はA会社が前記銀行から融資を受けるにつきその信用保証をなし、本件各手形金を右銀行に対し代位弁済して本件手形を右銀行から裏書譲渡を受けたものであることが認められ、被告が原告に対し主張する抗弁事実については、これを認め得べき証拠はないから、本訴請求は正当。

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